観劇

【稽古場行ってみた!】ハナコキカク「おかしな二人~女性版~」@下北沢楽園 2023/11/29~12/3

こんにちは!近頃完全にブログの更新をサボっております木村恵美子です!
今回はいつも稽古場レポート、ゲネレポート等を書かせていただいている劇団晴天の劇団内ワークショップから誕生した企画、ハナコキカクの稽古場見学に行かせていただきました!ハナコキカクは劇団晴天の劇団員で女優と、劇作家をサポートする”編集者”として活躍しておられる白石花子さんによる企画で、主に既成戯曲を上演していくそうです。

ハナコキカクの詳細は公式サイトからどうぞ!

初回の今回はニール・サイモン「おかしな二人~女性版~」!

さて今回のハナコキカク、演目はニール・サイモン「おかしな二人~女性版~」です。
あらすじはこちらです。

◆あらすじ◆
NYの高級アパートに住むTVプロデューサーのオリーブの楽しみは、週に一度開催される女友達とのボードゲーム会。
自分の心地良いように暮らしている部屋は散らかり放題。
そんなある日、友達の一人 フローレンスが夫に捨てられ、自殺しようとしているとの知らせが入る。
傷つきボロボロになったフローレンスはオリーブのもとへやってきて、あれよあれよと真逆の二人の同居生活が始まった‼
自分の力で手に入れた暮らしを謳歌するオリーブには怖いものなんて無いように見えたが……。
1985年初演、ニール・サイモンによる傑作コメディ!屈強な女たちが繰り広げる愛しくも可笑しい友情の物語。

どんなお話?


ニール・サイモンの「おかしな二人」といえば、1965年にブロードウェイで上演され、1968年には映画化、日本でも何度も上演されてきた人気の作品ですが、今回は女性版。後から執筆された女性版ですが、こちらも人気で、今年もシアタークリエで上演されたりしていました。


女性版はニール・サイモン戯曲集の3巻に収録!

恥ずかしながら私は名前は知っていたものの観たことが無かったのですが、
今回稽古見学に伺うに際し、男性版、女性版双方の戯曲を拝見しました。
面白いです。さすがです。

さすが映像化もされ、世界で何度も上演されている作品!
1965年に書かれた作品ですから時代背景や価値観の違いはあれど、普遍的な人間愛と視点の面白さに、大笑いしました!

何が面白いと思うの?

まずとにかく話が面白い!台詞が面白い!パンチラインがいっぱいある!んですが、今回私は特に男女逆転版の2作品の在り方が面白いなー!と思いました。

両バージョン読んで、これは面白いな!と思ったポイントなんですが、基本的には設定がまんま男女逆になっただけなんですね、
だけど、そこから先、性別逆転による価値観とか立場の変化が話の筋は変えないままで上手く描かれていて、
単純な男女逆転版とは言い切れない面白さがあります。女性版の方が好きという方も少なからずいらっしゃるでしょう。基本筋はどちらも同じ。

ある部屋での、友人たちのかけあい。彼・彼女らは毎週金曜日の夜にゲームに興じています。彼らは家庭を持っていたり、離婚していたり、独身だったりと背景はバラバラですが、ゲームの興じる傍らで近況報告をし合う機会を設けているわけです。

そんなある日、その中の一人が離婚を言い渡され、不幸のどん底で現れる。その部屋の家主と同居することになるものの、大変な潔癖症で、非常にずぼらな家主によって酷い有様だった部屋は、次の場面では見違える様子になっている……。

『おかしな二人』と題するだけあって、この2人、女性版ではオリーブとフローレンス、男性版ではオリバーとフィリックスの関係性がメインとなっていくわけですが、彼らの現実味が男女で変わることによって、作品の質感が変化するのが面白かったですね。

正直、男性版は極端でコメディ的に感じます。ト書きもコミカルで大変楽しめるのですが、一方で現実感があるか?というと、あくまで物語の世界、そういう風に感じます。(いないわけではないと思いますけどね)

しかし女性版は、なんだか現実味があるように感じられるんですね。私が女性だからかもしれませんが……。
まず私は自分自身が片づけられない女なので、その点部屋の主人であるオリーブには大変な共感があります(オリーブ程ではないと思いたいですが……)。そして神経質なフローレンス、彼女は私からすれば……、「ああ、こういうお母さんいるよね」っていう。双方多少極端なはずなのにもかかわらず、いるいる!こういう人!という感覚があります。

そして友人たちについても、男性版より女性版の方が、彼女らの人生、特に夫やパートナーとの関係性ですかね、背景がより垣間見えるような描写になっていて、またそれも込みで舞台上の関係性にも関わってくるような、そんな戯曲的熟成があるように思うのです。

個人的には、そうですね、男性版を、読んで、または(私自身は観てないのですが)映画版を観てからご覧いただくと、その違いが一層楽しめるのかな?と思いました。

女性同士の掛け合いだからこそ、ハナコキカクでやる意味がある!

さて、今回はハナコキカクでの上演です。
おかしな二人は一般に「コメディ」とされていますが、それは新喜劇的な誇張された面白さではなく、シチュエーションコメディ。
癖のある人間同士の関係性に面白さがある作品です。
そして今回上演されるのは女性版。癖のある女たちのやり取りに魅力があるわけです。

そしてハナコキカクの出演者は多くが劇団晴天の劇団員。劇団晴天は劇作家の大石晟雄の戯曲の面白さはもちろん、
実力派の女優陣の巧みな芝居も魅力の劇団です。
さらに演出の白石花子さんも劇団員ですから、いつも創作を共にしている仲間ということで、各自の魅力は知り尽くしていますから、これはね、もう面白くならないわけがない企画ですよね!

笑いが絶えない稽古場でした!

さてそんな色んなワクワクを胸に伺った稽古場。急に寒さが厳しくなった日でしたが、みんなで熱い稽古が行われていました!
(実際に冷房かかってました(笑))

印象的だったのがとにかく笑いが絶えない。
「是非稽古場に来てください!」と角田さんからご連絡いただいた際も、
「とにかく稽古が楽しいんです!」
と仰っていたのが印象的でしたが、稽古風景からもその「楽しい!」がビシビシ伝わってきました。
みんなで笑いながら、でもとても繊細な演出や段取りを付けていらっしゃって、
さらにその出来栄えにみんなで笑って。演出の白石さんも終始ニコニコで、
良い稽古だなあ、と思いました。

関係者が「楽しい!」って思ってやってる作品って、そういうエネルギーが乗るんですよ。
今回の作品はそれが特にいい方向に向かう戯曲、メンバーなんじゃないかなと思います。

俳優が演出する良さ

演出ばかりやってきた方の演出と、俳優をある程度ガッツリやってきた方の演出は視点や言葉選びが全然違うと感じます。でも白石さんの演出は、俳優もガッツリされながら、実は演出経験もあったり、劇団晴天でも編集者という役割をずっとされてきているのもあって、ハイブリット型でバランスがとれていて、俳優陣もとてもやりやすいのではないかなーと感じました。

個人的には、私自身劇作や演出をしてきましたので、「最初から俳優と演出家として出会う」のではなく、
「俳優同士の関係を築いてから俳優と演出家になる」っていう関係性に対する一種の嫉妬みたいなものがありまして。
私も一時期俳優のワークショップに通っておりましたから、一部のメンバーとはそういう関係性を築けていたりもするのですが、
もう、全然違うんですよね。

何が違うか……、言語化すると難しいんですが、もう「仲間感」が断然あるというか……壁がないというか……。
逆に言うと、演出家と俳優という立場で出会うと、良くも悪くも立場の違いが出てきてしまうんですよね。
“「演出家」「劇作家」「主宰」という生き物”みたいな扱いになりがちな印象があります。
それによって権力的なものが生まれてしまう負の側面はあるのですが、
同世代と一緒にやっていると特にその溝が寂しく感じたりもするんですよね。「仲間に入れてほしい!」みたいな。

そういうわけで今回のような俳優が演出をする公演は、特有の一体感、仲間感があって「楽しい!」が増大する傾向がありますからね、羨ましく思っております。

こちら演出家のコリをほぐしてあげる様子(笑)とか。

今回はそういう演劇の楽しさがね、演劇全体に乗っていっておりますので、
コメディとはいえ楽しいだけの作品ではないですけれども、
「ああいいもの観たな!」っていう爽やかな読後感と共に劇場を出られるような、
そんな陽のエネルギーに満ちた作品に成長していくんじゃないかなあって思います。

色々チャレンジしていて楽しい!

宣伝をはじめとした制作面についても、新たなチャレンジをされていて面白いです!

映像での宣伝や、相関図を作成されていたり、
お弁当差し入れ券販売などもされていて、そのあたりもワクワクです。

もちろん俳優陣が魅力的ですよ!

「おかしな二人」のメイン二人を演じるのは、佐藤沙紀さんと近藤陽子さん!

ガッツリ言い合うシーンなどは見ごたえ抜群です。
でももちろん他のメンバーも個性が光り、魅力的です。
女優陣のみならず男性陣も魅力的です。
男性陣もまた一癖も二癖もある役ですが、コツコツ仕上げてきておりました。
私、稽古場で「めっちゃ笑ってたよね」と指摘されるくらい大爆笑しましたので、

「おかしな二人~女性版~」といえば、過去の他の団体の上演を観るに、
結構ポップな衣装で視覚的に演出するパターンも多いように見受けられます。
今回の稽古見学ではまだ衣装は決まっていませんでしたが、今回、視覚的にはどんな作品に仕上がるのか、
戯曲の時点で指定が多数ある舞台セットや小道具等をどうしていくのか、
そういったの面でも今からとても楽しみです。

劇場で拝見するのを楽しみにしております!応援しております~!

公演詳細

11月14日現在、まだお席はあるようです!ハナコキカクの詳細は公式サイトX(Twitter)Instagramからどうぞ!