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【ゲネ感想】2223project produce 劇団晴天の「曇天短編集」vol.2 とにかくどんな苦境の中も、”生きる!!”としがみつく

さて、さて、さて!!! 自分の結婚報告の後処理が終わってないやらかし木村恵美子です。今回はまた劇団晴天主宰・作・演出の大石晟雄(おおいしあきお)君が「感想書いてよ!」と頼んでくれましたので、年明け以来のゲネ感想記事です🎉

今回は、昨日初日を迎えました、
2223project produce 劇団晴天の「曇天短編集」vol.2
の感想を書かせていただきます!!!

今回も今まで同様、じっくりじっくり、書いていきたいと思います。大きなネタバレは▼みたいなボタンで開閉できるように隠してありますが、全編地味にネタバレしておりますので、ネタバレしたくない方は観劇後にご覧ください。

木村恵美子って誰よ?
私を知らない方のために自己紹介をしますと、 木村恵美子と申します。kazakami(カザカミ)という劇団?ユニット?を主宰している劇作家・演出家で、大石くんとは王子のDWS(ディレクターズワークショップ)で出会いました。近年ではこまばアゴラ劇場の演劇学校、無隣館に参加して)、そこで演劇の勉強をすると共にWEB企画として写真と稽古場日誌を書くWEBメディアを運営してきました(青年団入団後も続けさせていただいております)。それでその流れで、似た活動をもっと外でも出来ないかな、と考えているところで、大石くんからお声掛けいただきました。あと、最近はあんまり貢献出来ていませんが、アマヤドリという劇団で劇団員として演出助手に明け暮れてもいました。まあ、その、なんだ、演劇バカの一人です。

大石君にゲネ感想を頼んでもらうのはもう3回目ですね!ありがたい!
過去の記事はこんな感じです。特に今回の公演は短編集なので、じゃあ普段の劇団晴天ってどんな作品を作ってるの?という方はこちらもあわせてご覧いただくと空気感を掴んで頂けるのかな、と思います。(今回3回目なのに過去記事が3本あるのは、最初が2本立てだったからだよ!!)

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さーて、今回3本あるのでどこから書いていったものかな~と思いますが、どうしようかな。とりあえずチラシの表記、かつ上演順に合わせて書いていきましょうかね。

ちなみにチラシ裏(情報面)はこんな感じです。
劇団晴天ではまいどおなじみ、横井希美さんのデザインですが、とにかく読みやすくて素敵……。
あ、ちなみにチラシのタイトルとキャッチコピーがどっちがどっち問題ですが、上の太字がタイトルでした。「風船割り放題」ってタイトル、なんやねん……(笑)(タイトル問題は右の「換気扇の音量なのかよ」を見れば一目瞭然ですけどね……)

じゃあとりあえず「換気扇の音量なのかよ」は置いといて、「風船割り放題」の感想から行きたいと思います。

本当に風船割り放題

まずお伝えしなければならないのは、

本当に風船割るから音が苦手な方はちょっと覚悟しておいてくださいね!
っていうのと、
風船は道具を使って膨らませてるから飛沫感染的側面は安心・安全ですよ!
というところです。ちなみに風船は後半で割れます。

気になる方は気になる(というか私は気になる)ので、お伝えしておきます。

「風船割り放題」は、いわゆる三角関係のお話です。近藤陽子さん(劇団AUN/劇団晴天)演じるリコと、櫻井竜彦さん(梅棒)演じる瞬、荒木広輔さん(劇団晴天)演じる一郎太が繰り広げるちょっと変わった三角関係。大石くん曰く、「普段書かない恋愛ものを書いてみたかった」とのことなんですが、なんというか、普段の劇団晴天と比較するとだいぶ設定が捻じれてる感じはしますね。3本目の「晴れたよって言われても」の方が劇団晴天っぽい恋愛もの、と言えるかもしれません。(「晴れたよ~」はどちらかと言うと友情ものでそんな恋愛恋愛って感じでは無いんですが……)

なんか、これを書いた大石くんの恋愛観が気になってきちゃいますよね~とか、いいんだ、それはいいとして、この作品の最大の魅力は、その捻じれた設定が、役者の魅力を最大限に引き出していることだと思います。キャスティングの勝利、っていう感じの作品だったかと。

 撮影:保坂萌

まず近藤陽子さん(劇団AUN/劇団晴天)演じるリコ、これハマリ役だと木村は思いました! え、凄かった。このちょっと拗らせた女の子やらせるとハマリまくる……。そういえば「共演者」の時もちょっと拗らせてた気がする(あの作品はみんな拗らせてると言えば拗らせてるけど……)。また容姿の面でも華やかな感じの美人さんで笑顔が映えて印象が明るくなり、変に悲痛な印象にならないところもこの戯曲にぴったり……。

 撮影:保坂萌

それから櫻井竜彦さん(梅棒)演じる瞬も良かったですね……。この作品の中で一番、いるいるこういう人!ってなる役でしたが、一方ガッツリ毒を吐かれたりもする。刺さる人には刺さるかもしれません。しかし櫻井さん、本当にこういう役似合いますね……。いつかこう、「振り回され系主人公」としてのこういう役をされてるところを拝見したいです。

 撮影:保坂萌

あと荒木広輔さん演じる一郎太……!この役はトリッキーすぎる(笑)作中何回も見ている側「ええ!?」って思わせるけど、荒木さんの雰囲気が上手いこと説得力を担保していてとっても良かったです。またこの役に関しては衣装のマッチ具合にも笑ってしまいました(笑)

ネタバレ:細かな設定とセリフの面白さよ……
この戯曲で面白いのはやはり捻じった設定とそこからうまれる細かな人物設定とセリフだと思うんですが……。個人的に好きだったのが、なぜ三角関係になってしまったのか?というのを表すリコの台詞と、瞬が後半で思わずリコに対して暴言を吐くにも拘わらず、その後修復を試みようとする愚かさ(いやそれ言っちゃったらもうだめだろっていう……。でも人って極限状態になるとそういう行動に出ちゃうことあるよねっていう……)、あと一郎太の拗れに拗れまくったあれこれ……および、序盤に彼に訪れるある不幸(笑) その不幸に関してはこの戯曲において発明だったかもしれません。

あとね、あとね、今回の短編集ね、舞台美術が良いんですよ!! 今までも良かったんですけど、でも!なんか今回の家具たちは一工夫きいていて面白いです。劇団晴天はいつもこういう家具に力が入っている印象ではありますが、木村的には今回特に好きかもだったので、劇団晴天常連の皆様も是非チェックしていただければと思います。

 

私から見える、その背中も変化する。

続いては『あなたが窓際にいると私には背中がみえる』ですが、

私これ好きなので誰かコミカライズして

な気持ちです。俳優さんの似顔絵から立ち上がるショムニみたいな絵だとなお良いかも。いっそ私が描くか!? 時間ないけど!!!

ってな感じでですね、正直漫画向きな、細かい細かい心情とその変化が丁寧に拾われたヒューマンドラマだったと思います。特に短い作品のなかで、数年間の心境の変化、関係性の変化がつづられる点が非常に良かったです。

またこちらもキャスティングの勝利なんですよね……。またお一人ずつ振り返りたいと思います。

 撮影:保坂萌

まず佐藤沙紀さん(劇団晴天)演じる上条(かみじょう)。ああ、ああもう、最初に舞台上に見えた瞬間から役の背景がしっかり見えて非常に良かったです。特に序盤は『共演者』で演じられてる役からは考えられなかった!! 演技の幅広いなあ、凄いなあって思いました。

 撮影:保坂萌

それから永田涼香さん演じる沖(おき)!!! こちらは一貫性のある姿勢であるにもかかわらず、逆に最初の頃、2人の関係が見えてこなくて、わーなんなんだ!?から始まるにも拘わらず、セリフの巧みさあり、演技の巧みさありでどんどん「ああ!こういうのあるある!」と解像度を高めていくお芝居。こちらも良かったです。

とにかくこの作品は、大石晟雄の関係性の筆力がうかがえる良作だと思います。ごめんなさい、この作品はそんなにネタバレなしで頑張れないので隠しますね。

ネタバレ:まるで宝石を磨くように関係性が見えてくる
この作品の質感は、まるで宝石の原石を磨くように、もしくは化石を少しずつ掘り出していくように、氷山の一角からどんどん素敵な、もしくは巨大な、全貌が見えてくる作品、という印象でした。最初は見えてこなかった彼らの関係性も、少しずつ明らかになっていく情報で確かさを増していって、3本とも面白かった中、この作品が一番、何度も観たい作品でした。個人的には、私木村自身が以前書いた作品に根底の問いが近くて、妙に共感してしまったのもあります。最後の方、上条の台詞は最初は衝撃でしたが、後からじわじわとやってくる「ああ、そうだろうな」という実感があり、とても良かったです。

またこの作品はある2人の設定に対して、女優二人が二人とも”それっぽい”のが非常に面白いのですが、実際どうだったんでしょう。気になる……。

 

問題なのは「晴れているかどうか」じゃないのだ。

三本目は表題作、『晴れたよって言われても』ですが、今回これが、最も劇団晴天らしい一作だったかと思います。

取り残された4人のお話。それぞれに立場は違うけれど、それぞれに悲しみは根強くそこにある。ああ、本当に面白かったんですが言語化難しいです。見てください……。

とにかくお一人ずつについて語っていきますか。

 撮影:保坂萌

まず、今回の主役格。角田悠さん(劇団晴天)演じる吉田愛。描かれている姿、言葉は虚勢を張っているのもあって虚実入り混じってゆらゆら揺れる。けれど、確かな説得力を持ってそこに存在している。自分ではそこに取り残されたように思うけれど、確かに時間は経ち、自分も、自分を抜け殻のように思いながらも変化し、進んでいるし、人生を歩んでいる。確かに。その時、”私”はどこにいるのか。というか、そういう悲しさ。

 撮影:保坂萌

次に、吉田と一緒に最初から出てくる、鈴木彩乃さん(劇団晴天)演じる花井まりえ。仕事出来そうなのにできない、という設定が非常に説得力があるのは何故。鈴木さんって、多分ご本人よく言われるんじゃないかなと思うんですが、石原さ〇みさんに似てますね……?(黙ってはいられなかった)そして今回の花井役は特にそれっぽかったですね……?って個人的には思いました(個人的すぎる)。花井は、彼のことをどう思っていたんでしょうね、というのが終始気になっていましたが、結局語られず、でもそこも良いなと思っていたりします。

 撮影:保坂萌

それから、白石花子さん(劇団晴天)演じる根木加代子。これも、まあ、ハマリ役なんですが……。白石さんのこういう役のピカイチさすさまじいんですが……!!! ある設定につきまして、大石くんはなんでそんな設定思いつくのん!!って気持ちにもなりました。なにもそんな書き方しなくたっていいじゃないか!いいじゃん別にそういう一過性の趣味があったってよう!!って自分のことじゃないのに地味に根木を擁護したくなりました(笑)

 撮影:保坂萌

そして最後にこの戯曲の唯一の男!函波窓さん(ヒノカサの虜)演じる仁科徹!!もはや函波さんは「でた!」って気持ちになる位の常連客演さん(今回連続3回目)ですね。また、この役もハマリ役でした……! また衣装がちょっと変わってるのもよく似合っており(もしかしてご自身の私服なのかしら)……!! めっちゃ余計なこと言っちゃうし、面倒くさいところもあるんだけど、基本的には良いヤツ。本当はもっと裏設定ありそうなのに、そこはちらつかせる程度なのもまたよかったのでは、と思います。

ネタバレ:取り残してしまうこと、に思いをはせる
この作品は、5年前に事故で亡くなった友人、木村の話題が中心となって進んでいきます。まあその、その名前が「木村」だったのもあり、観ながら、ああ、取り残されてしまう苦悩を考えたら、取り残してしまうこと、についても、考えなければいけないよなあ。と思いました。死は誰にでも平等に訪れる。歳をとってから死ぬことの方が多いけど、この作品みたいに事故とかで急に死んでしまうこともある。そして、この物語のように周りに色々余計な推測をさせて、悩ませて、立ち止まらせてしまうこともある。だから、若いころからでもエンディングノートとか、書いておくっていう手段はあるし、自殺なんていうのも、周りの苦悩を考えたら出来ないよなあ、なんて、思いました。超個人的ではありますけれども。にしても、居なくなってしまった人の存在感は、なんでこんなに大きいんでしょうね。

まあ、なんだ、これも。細かく書くとネタバレがすぎるのであんまり書けませんが、是非劇場でご覧いただけたら、と思います。

 

換気扇の音を使ったひとり芝居。これは強い。

最後はついにきました『換気扇の音量なのかよ』です!!

こちらは全体の最初と最後、それから舞台転換の間に上演される、つかてつおさん(東京ジャンクZ)によるひとり芝居です。

 撮影:保坂萌

あえてネタバレしますけども、換気扇の音で場転を隠すというナイスアイディア。

かつ、この作品だけ時系列が完全にコロナ禍下というのも、この時期に上演されるお芝居として非常に楽しいです。他の作品はコロナ禍については言及されていないので、せっかくなのでこういう題材のお芝居が一本あるのは非常に良いと思います。

まあね、内容については劇場で実際にご覧いただくとして。個人的には、わたしの観たかったつかてつおはこれです。これなのです。という気持ちです。キャラが良いです。非常にマッチしてます。また、頭から終わりまでの心情の変化、関係性の変化(ひとり芝居なのに)も見逃せないし、衣装も最初「ん?」ってなるけど意味が分かると最高。あと方言シーンもあります。短いのにてんこもり……。これを録画して宣伝材料としてみせたら良いよ!と思ったものの、そうだ、換気扇がうるさいのよねこの芝居……。だめだ……。

 

大変だと思う!だけど応援してます!!

てな感じで書いて参りましたが、やあもう、あえて書きますけれども、大変だっただろうなあ、と思います。

なんたってコロナ禍下。演劇業界への向かい風はすさまじいものがあります。どんなに補助金が出たって、本番のために毎回消毒をしないといけないとか、お客様の連絡先を集めないといけない(万が一感染者が出た時の追跡のため)とか、まずもって客席の数を減らさないといけないから収入が少ない、とか、稽古自体が大変だし常に感染リスクがあるから検査を徹底して稽古外でも気をつけなければいけない、とか。万が一感染者が出てしまったら公演が全部中止になるかもしれない(そしたらめちゃくちゃ赤字になる)、とか。そもそも、そもそも短編とは言え新作を4本書くというのはものすごい大変だ、とか。でも睡眠時間を削ったり食事を削ったりして時間を捻出しようとすると身体が弱って感染リスクが上がる、とか。もう、もう想像を絶する大変さだっただろうなと思います。(実際私は自分が公演前に過労で体調を崩しがちなので、戯曲を書いたりはしている一方で上演活動に踏み切れずにいます)

でも、その中でも演劇の火を絶やさないことに拍手を送りたいと思います。初日本当におめでとうございます!!

今回、全体を通して、とにかくどんな苦境の中も、”生きる!!”としがみつくというような傾向があるのでは、と思います。長引くコロナ禍下でしんどいな~とおもっている方も、是非ご来場いただけたらと思います。劇場内の感染症対策は万全です。

頑張れ劇団晴天!私も勇気をもらって自分の活動について考えていきます!

 

ここまで読んでくださった方、長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。
もし、さらに公演詳細を知りたい!という場合はこちらのページからどうぞ!

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当日券情報等は、劇団晴天Twitterで確認いただけますので、ご確認ください!